コワーキングスペースの歴史

日本テレワーク協会刊『テレワークで働き方が変わる!テレワーク白書2016』より

松村執筆

工業社会から情報社会の転換する今、オフィスワークの比重が高まり、仕事は単純作業からクリエイティブワークに移っています。世界の大都市では港湾地域や工場地域が次々遊休地になりましたが、こうした地域がクリエーターの目にとまります。彼らは倉庫などをワークスペースに改造していきます。いわゆる1980年代からのSOHOブームです。日本ではバブル経済の崩壊後、第三次ベンチャーブームが訪れ、SOHO、起業家、クリエイティブワーカー、ノマドワーカーが注目されます。

 

ICTを活用するSOHOワーカーやノマドワーカーが自営型テレワーカー、あるいはフリーランステレワーカーと呼ばれています。

 

2003年にはICT企業が集積した六本木ヒルズが開業します。森ビルは六本木ヒルズ内にコワーキングスペースと呼べる「アカデミーヒルズ六本木ライブラリー」を同時に開設しました。法人向け賃貸オフィスビジネスを展開する森ビルが早くもSOHO・個人ワーカー向けのビジネスを始めたことは注目されます。その後森ビルは、2010年、東京・平河町の平河町森タワー内に「アカデミーヒルズ平河町ライブラリー」を、また2013年には、東京・赤坂のアークヒルズ内に「アカデミーヒルズアークヒルズライブラリー」をオープンさせました。

施設名にコワーキングスペースとついた施設がオープンしたのは、2010年5月に神戸でオープンした「カフーツ」からといわれています。東京初は、2010年8月に開業した「PAX Coworking パックス・コワーキング」です。その後、コワーキングスペースは急拡大しています。

インキュベーション施設やテレワークセンターが行政主導で整備され運営されているのに対して、コワーキングスペースは民間が運営している点が一つの特徴です。

2012年4月26日、渋谷のヒカリエの開業にあわせて、コクヨファニチャー株式会社がコワーキングスペース「クリエイティブラウンジMOV」をヒカリエ内に開業させました。

近年では大手不動産企業の参入も盛んになってきています。

東急不動産は、2013年3月に東京・南青山にコワーキングスペースとシェアオフィス機能を併せ持つ、東急不動産初となる「ビジネスエアポート青山」を開業しました。また2014年3月には、品川・港南に「ビジネスエアポート品川」を、続いて2014年11月に東京・丸の内に、ビジネスエアポート東京とビジネスエアポート丸の内の2拠点を同時にオープンさせました。

三井不動産は、2014年4月柏の葉スマートシティ(千葉県柏市)に、コワーキングスペース「KOILパーク」を開業しました。「KOILパーク」のほか、3Dプリンターなどのデジタルファアブリケーションができる「KOILファクトリー(デジタルモノづくり工房)」やカフェ、スタジオなどを併設しています。また、同じ2014年4月、東京・日本橋のマンダリンオリエンタル東京の近隣に、コワーキングスペース「Clipニホンバシ」を開業させました。

住友不動産は、2014年10月、住友不動産初となるコワーキングスペース「ワールドラウンジ新宿」を新宿住友ビル49階にオープンさせています

 

地方のコワーキングスペース

コワーキングスペースは、地方でも開設されるようになってきています。図表**は、全国のコワーキングスペースのポータルサイト「Coworking.com」に掲載されているコワーキングスペースの都道府県別の数を示している。合計で300ヶ所である。東京が最も多く44.0%、ついで大阪が10.7%となっています。東京都・大阪府を除いた他の都道府県が45%ほどあり、地方においても多数のコワーキングスペースが開業していることがわかります。